コーヒー農園とフォークアートの手法
私たちは、提携したいと考えていた農園の方々に思い切って会いに行った時、農園の自然の青々とした美しさ、複雑な生態の多様性、そしてそれぞれのコーヒー豆を生み出すプロセスの各工程における信じがたいほどの作業量に圧倒されました。
ビービー・プランテーションの農園
コーヒー豆の栽培方法と焙煎方法について、もっとたくさんの方々に考えてもらうため、私たち自身が目にしたものを視覚的に表すことは、私たちにとって重要なことでした。私たちの商品パッケージの裏面にあるアートを見ていただくと、生態系の多様性、コーヒー農園での日々の生活の細かいようすや、豆のプロセスにおける特定の工程といった、数ある場面の中の一面を切り取ったイメージが描かれていることが分かると思います。こうしたアート作品について、もっと詳しく教えて欲しいというご要望をたくさんいただいているため、この記事では、私たちに協力して下さった才能あふれるアート作家の皆さまの栄誉を称えたいと思います。
コーヒーのパッケージを壁に飾りたいと考える方ばかりではありませんので(中にはそのような方もいますが!)、私たちは、アート作品のうちいくつかをプリントしたものを商品化し、その商品の利益の50%を作家の方に還元することにしました。
Jagdish Chitara さん
Jagdish Chitaraさんは、アーメダバードを拠点に活動するバガーリの作家です。彼のアート作品は、マタニパチェディと呼ばれる独特の方法で描かれています。通常、マタニパチェディの作品は布を媒体としますが、Jagdishさんは、私たちが提携している他の作家の方々と同じく、驚くほど自由に、あらゆる媒体で作品を制作しています。
マタニパチェディは、文字通りに解釈すると、「マタ女神の後ろへ」または「マタ女神に従う」を意味し、グジャラート州アーメダバードとその周辺のケーダーという都市を起源とする伝統芸術です。マタニパチェディは、300年続く伝統芸術であり、布のアート作品を組み合わせて、寺院の壁に飾られたり、背景幕として使われたりします。このアートの技法は、よく、カラムカリ(カラム=ペンまたは先の尖った筆、カリ=技術または作業)と呼ばれています。このアート作品は、布に伝統的なブロックプリントを行ってから、カラムで色付けして細部を引き立たせるという作業を組み合わせて制作されます。
マタニパチェディの作品例(出典:Gaathaのブログ)
マタニパチェディの主な特徴は、真ん中にマタ女神が描かれており、左右には神話の登場人物、人間、音楽を奏でる人、いけにえの動物、そして花がモチーフとして描かれていることです。絵の境界線は、太く、様々な装飾が施されています。
伝統的に、マタニパチェディは、マタ女神への敬意を表す儀式的な表現であり、マタ女神を信仰する人たちからは、豊かな自然はマタ女神がもたらした贈り物であると信じられています。「Peacock and Bull(クジャクと雄牛)」と「Elephant and Boar(ゾウとイノシシ)」の2種類の作品は、Jagdishさんが私たちのパッケージのために制作して下さったものです。これらの作品の背景にある自然志向な題材は、インドのコーヒー農園のバードフレンドリーかつシェードグロウンという面を強調し、自然を尊重しつつ見守るという、古代から伝わるマタニパチェディの信念を表しているものです。
左:『Elephant and Boar』、右:『Peacock and Bull』(出典:Blue Tokai Coffee)
Sukhnandi Vyamさん
出典:Mid-Day
ゴンド画作家のSukhnandi Vyamさんは、私たちのパッケージに初めて使用したThe Coffee Tree(コーヒーの木)という作品を手掛けた方です。Sukhnandiさんの表現手法は、ゴンド画であり、もともと歌を通して伝わってきた民話や伝統的なゴンド族の文化を視覚的に表している伝統芸術です。伝統的に、パルダーン・ゴンド族は、歌いながら『バーナー』と呼ばれる弦楽器を演奏することで、部族の民話を伝承してきました。ゴンド画は、そうした民話を視覚的に表したものと考えられています。そして、パルダーン族は、このような民話や歌を、演奏と共に後世に伝えていく責任があるのです。こうした伝統的な側面と、パルダーン族の語り手それぞれの独特な雰囲気とが、不思議な融合を遂げたことで、ゴンド画は、常に何か新しさを感じさせる特徴のある芸術となりました。
この表現手法の人気を受け、ゴンド画は今やインド国内の各地で、伝統的な方法で制作されたシルクスクリーンのプリント、木製のアート作品、そしてキャンバスの作品が販売されています。そして、ゴンド画作家の方々は、素晴らしいアートが幸運をもたらすという信念の元、現在でも、土壁でできた小屋の壁面や床に、作品を描いて装飾しています。
SukhnandiさんのThe Coffee Treeという作品には、ゴンド画の特徴である均等さが反映されています。Sukhnandiさんは、細い線と点を使い、左右対称なデザインで、自然を神聖なものとするゴンド部族の核となる信念を表現しました。ゴンド部族は、自然は神聖なものであり、あらゆる生命に通じるものであると考えています。Sukhnandiさんが制作して下さった架空のCoffee Treeという作品には、人間の生活と森に生息する動物たちがコーヒーの木を囲み、共生するようすを分かりやすく表現しています。
Sukhnandi Vyamさんが描いた『The Coffee Tree』(出典:Blue Tokai Coffee)
Teju benさんとGovind Jogiさん
Ganesh JogiさんとTeju Benさん(出典: folkart.org)
Teju benさんと、彼女の息子のGovind Jogiさんをアートの道に導いたのは、運命でした。Teju benさんは、絵を描き始める前の彼女の人生から、順に教えてくれました。Teju benさんと、後に夫となったGaneshさんは、サーランギーを携えてラージャスターン州の村を歩き回り、Ganeshさんの祖父たちが彼に歌ってくれたのと同じように、夜明けをたたえる民謡を歌っていました。2人は、歌を歌う代わりに食べ物やお金を受け取っていましたが、この慣習は金銭的に不安定なものでした。彼らが直面した貧困は深刻なものだったので、グジャラート州に移り住み、わずかな日銭を稼ぐため肉体労働を行うことにしました。
実に幸運なことに、Ganesh Jogiさんは、偶然にも、文化人類学者であり画家で部族芸術や文化の権威であるHaku Shah氏に出会いました。この出会いが、Ganesh Jogiさんの人生を変えたのです。
Haku Shah氏が、ペンと紙を使って自分を表現するようGaneshさんに勧めたことで、Ganeshさんはペンの握り方すらろくに知らなかったにも関わらず、自分の頭の中にあるイメージを描くようになりました。Teju benさんは、自身もその数年後にHaku Shah氏から絵を描いてみるよう勧められ、はじめは絵を描くことに自信がなかったものの、すぐに自分自身を表現する心地よさを感じるようになったと言います。Teju benさんのアートには、人々、そして都市での生活を描く上での彼女の独特な視点を元に、題材を様々な形に変換するというセンスが表れています。
Teju benさんのアート作品(出典:bookshop.mousover.in)
Haku Shah氏が彼らに絵を描くことを勧めたように、Teju benさんとGanesh bhaiさんも、自分たちの子供に、ペンと紙を使って何の制約もなく自分自身を表現するよう促しました。Govind Jogiさんは、彼らの3番目の子供で、Teju benさんのものとは全く異なるアートを制作しています。Govind JogiさんとTeju benさんが私たちの焙煎所に見学しに来たのは、焙煎を行わない日だったため、その日の主な業務は豆の選別でした。彼らは、その光景を各々の表現で描きました。Teju benさんは、袋に入った豆を選別している何人もの女性たちと、その周りに豆の入った袋を描きました。それに対し、Govindさんは、1人の人物が木の下で豆を選別するようすを描きました。どちらも、繰り返しの形と非常に細かい表現という点は共通していますが、それぞれまったく異なる場面を、同じくらいユニークな方法で描いています。
左:Govind Jogiさん作 『生豆を選別するひとりの女性』、右:Teju Ben
さん作 私たちの焙煎所で『豆を選別する女性たち』(出典:Blue Tokai Coffee)
私たちは、Teju benさん、Govindさん、Sukhnandiさん、そしてJagdishさんのような作家の方々と手を組む中で、インドのフォークアート作家の方々の幅広い才能にスポットライトを当てることができることを、非常に光栄に思っています。作家の方々が農園や焙煎所での生活についてのイメージを表現するとともに、その美しさは、私たち自身やお客様がパッケージをふと見た瞬間に嬉しくさせてくれるだけではなく、より深い部分で、私たちの仕事の芸術的側面の形成に力を貸してくれているのです。
ここで紹介されている美しいアート作品をご希望でしょうか?でしたら、簡単にご購入いただけます。アート作品を購入するには、コーヒーの商品一覧のページから、お好きなコーヒーをお選びいただくだけです。Blue Tokaiのコーヒーのパッケージには、これらのアート作品のどれか1つがプリントされています。または、私たちの取り扱っているポスターの一覧から、お部屋に飾る作品をお選びいただくことも可能です。